愛知大学岩田晋典ゼミのブログ

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記事レビュー:働き方改革はどう報道されているか(by N.S.)

 新聞各社によって世論調査の結果に違いが現れることはよく知られている。働き方改革に関する朝日新聞産経新聞の調査を比べてみよう。
 まず、朝日新聞の例として、2018年2月19日付けの朝日新聞記事「世論調査―質問と回答〈17日、18日〉」を取り上げてみよう。
 朝日新聞は、2018年2月17・18日に世論調査を実施しており、その中で次のような質問文を用いている。
「◆安倍政権は、「働き方改革」の一つとして、裁量労働制の対象を、法人営業の一部などに広げようとしています。裁量労働制は、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ定めた時間を働いたとみなして会社が賃金を支払う制度です。安倍政権は「柔軟な働き方につながる」と説明していますが、野党は「長時間労働を助長する」と批判しています。あなたは、裁量労働制の対象を広げることに、賛成ですか。反対ですか。
 

  この質問文は、先に一定時間働くとみなされ、実際に働いた時間は関係がないものとされるため、労働時間が長くなる傾向がでてくるという裁量労働制のデメリット(2018年2月22日 劇選 労働問題弁護士ナビ)に重点を置いている。

 しかし働き方改革についての質問はこれだけであり、正規社員と非正規社員の給与の各差を無くすということや、残業時間に上限を設けるということなど、他の働き方改革の特徴については全く触れられていないため、デメリットを印象付けるような質問文となっている。この質問に対しての賛成票は低く、17パーセントである。
 
 次に産経新聞のケースはどのようなものであろうか。2018年2月12日付けの「特集: 産経・FNN合同世論調査 質問と回答」という世論調査の中では、働き方改革について4つ質問が記載されており、正規社員と非正規社員格差是正や残業時間の上限など、朝日新聞に比べて働き方改革制度のプラスと思える点に関しての質問が多い。
 しかし、産経新聞では朝日新聞が挙げた裁量労働制の問題に関しては全く触れられていないため、調査に答えた人々にとって、働き方改革のメリットを印象付ける質問文となっている。そうであるにもかかわらず、「期待しない」との回答の方が若干多い結果となっているため、働き方改革制度はアンケートに答えた人々から良いイメージを持たれていないのだと推測できる。
 
 朝日と産経は対照的な報道をすることでよく知られているが、大きな議論を呼んだ裁量労働制それ自体についてはノータッチである点は興味深い。
 
by N.S.
 
<参考>
・2018年2月12日付けの産経新聞記事「特集: 産経・FNN合同世論調査 質問と回答」
 
・2018年2月19日付けの朝日新聞記事「世論調査―質問と回答〈17日、18日〉」
 
・プラム綜合法律事務所「裁量労働制とは|今話題の自由な働き方に隠れた5つの問題点と対処法」(2018年2月22日)https://roudou-pro.com/columns/32/『厳選 労働問題弁護士ナビ』 2018年4月21日閲覧